蒸発王/蒸発王
発した
精神の構造が多彩なせいだろうか
人間は蒸発すると
色のついた雲になって
空に漂っていた
色は人によって
全て違った
空に
新しく鮮やかな色の雲ができるたびに
この街の誰かが
蒸発したのだとわかるくらいだった
病は時間にも感染したのか
時は
冬を閉ざす前から動かなかった
じわじわと霧のような冬が立ち込め
街は閉ざされていた
こうして
何時の間にか
街から全ては消えつつあった
私を除いて
欲深く
命に未練が強かったせいであろうか
私の身体は原型を保っていた
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