詩にはしない〜市村マサミに捧ぐ/山内緋呂子
 
れ、と思わせるライヴだった。目の前で歌ってくれるのだ。当たり前か。
奴は、アーティストだった。
アーティストなど、なろうと思ってもなれないもんが多い。でも奴は、アーティストにしかなれない奴だった。

「醜形恐怖の女がよう」
「便所の天皇」
「君に出会えて」

マサミのことを、ネット詩でしか知らなかった。
「天然果汁が降ってくる」なんて、詩で読んだら笑うところなのだ。
でもマサミは歌った。
まるでマサミの詩特有の滑稽さではなかった。どうしようもなさが、マサミの上に、天然果汁となって強く降り注ぎ、刺さるのだった。

全曲歌い終わった後、「やめさしてもらうわ」で、マサミは去った
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