蜻蛉の夢/蒸発王
薄く薄く
銀の羽が
細長く
腰まで生えているのがわかった
夢で善くあることだけど
訳も無く
僕には彼女が何物か解ってしまった
――薄羽蜻蛉(ウスバカゲロウ)――
産卵期を迎えた彼女には
儚げな印象は其のままで
太ももの付け根から
細い腰のくびれ
狭い胸の下まで
びっしりと
重たい卵がつまっていて
其の
腹の
右の部分が
裂けて
真珠色の卵が
覗いていた
弱っていた
彼女は
浅い息を繰り返しながら
卵は産まれるのでしょうか
と
呟いた
僕は
切なくて
愛しくて
彼女の手を
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