ロナの憂鬱/緑茶塵
 
酒を持っていくと、若い魔法使いはかつて母親をつれて行ったあの魔法使いのように、独り言を言いながら机を叩いているのを見た。
「落ち着いて、みんな怖がってしまうわ」
「魔法使いは、嫌われるんだよ」
そう答えた若い魔法使いは、もうおそろしく年を経た蛇のような目をしていた。
客はみな気味悪がって帰っていってしまった。

「泊まるところがないんだが」
「なら外で寝たらいいわ、あなた魔法使いなんだから何でも出来るんじゃなくて?」
「この家の前の杉の木の上で、月を浴びながら寝たいのだが、許してもらえるかな?」
そう聞く若い魔法使いは、朗らかで柔らかな青年の貌をしていた。
「良いんじゃなくて?
[次のページ]
戻る   Point(0)