ロナの憂鬱/緑茶塵
 
た。
さっきの客が「やめておけ、やめておけ」と一人事のように呟いている。
「まだ修行中なのかしら。海に落ちてしまうなんて」
クスクスとロナが笑いながら問いかける。
「まだまだ一人前ではないが、修行はもう終わっているよ。昔にね」
若い魔法使いは、温かくて強い酒を持ってくるように金貨を払って頼んだ。

「魔法使いに借りを作るなよ。こいつらはずる賢くて蛇みたいな奴らなんだ。魔法使いに借りを作るなよ」

誰かが呟くように、しかしハッキリと聞こえるように酒場の中で呟いた。
ロナは「そんな事はないわ、大丈夫よ」と答えた。でも誰も返事をしなかった。

ロナが若い魔法使いに温かくて強い酒を
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