「 つめたい家。 」/PULL.
 
で舐めて取る。
妻はいつもそうやってきれいにしている。
山神さまの子はまだ幼く、
体温を調整できない。
だから完全に凍ってしまう前に、
こうやって溶かしてやらなければならない。
そうしなければ山神さまの子は凍ってしまう。
死んでしまう。
死んでしまえば、
ただの氷となって、
あの子は熔けてしまう。
熔けた。
なら、




冷たい家の中では、
その子どもは、
よく凍る。
こおる。




おしめを替えると、
山神さまの子は決まって、
抱っこをせがむ。
わたしの服の裾を引き、
妻とおなじ目で抱っこをせがむ。
山神さまの子は妻よりも冷たくて、
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