「 つめたい家。 」/PULL.
て、
すこし痛い。
痛くなる。
わたしはいつまでも抱っこするので、
わたしの胸は凍傷だらけになる。
わたしの心はもう熔けている。
山神さまの子は、
この子は、
冷たい家の中では、
わたしの心は、
よく熔ける。
とける。
やがて日が暮れ、
闇が掛かる。
妻が帰ってくる。
妻はその夜の飯を炊き、
家族の晩飯を作る。
わたしは妻の炊いた冷たい飯を食べる。
わたしの妻は産まれたばかりの娘に乳をやる。
わたしの娘は妻の冷たい乳を美味しそうに飲む。
晩飯が終わるとわたしはまた娘を抱く。
わたしはいつまでも抱っこするので、
わたしの胸は凍傷だらけになる。
わたしの心はもう熔けている。
わたしたちは家族である。
了。
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