犬をめぐる文学的断章/葉leaf
 
、犬小屋の前にやって来る。犬は腹ばいになり光と熱を浴びている。犬が楽しんでいるとき、犬は不在である。犬の不在を、今、温かさが埋めている。私は柔らかい蒸気として犬の不在を埋めようとするが、犬が私に気づいたとたん、犬の不在は犬によって埋められてしまう。犬は後ろ足で立って、前足で私の脚にじゃれつく。しっぽを振る。犬は、動けば動くほどますます本物の犬になる。それに対して私は、行為すれば行為するほど偽物の私になってゆく。私は偽物になるまいとして、行為したい欲望に耐えてみるが、すぐに欲望に負けて、犬の頭をなでてしまう。犬の関節が滑らかに動くのは、過ぎ去った夜の冷気が関節を組成しているからだ。犬が喜びで身を震わ
[次のページ]
戻る   Point(9)