義眼の彼岸花/蒸発王
三日間眠り続けた
目覚めたのは
濃厚な血の匂いで
匂いに誘われて庭に出ると
私の眼球の血から
赤い赤い彼岸花が2つ芽生え
花弁を開かせようとしていた
半壊した水晶体は
醜さも美しさも何も映さないのに
何故か
その彼岸花だけはくっきり見えた
そうして
彼岸花が開ききると
円状の花弁の真中には
目玉が咲いていた
義眼だった
丸い形しかわからないが
目蓋の中に取り残された
半分の目玉が
凍るように鳴いていたので
きっと目玉だと思った
私には無用だったので
近所に住んでいる緑内障のおばあさんにあげた
おばあさんは義
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