清野無果「■批評祭参加作品■ネット詩fについて」を読んで、インターネットにおける言語表現について/田代深子
 
、表記統一と簡易化が求められていた。もちろん江戸期から口語において「共通語」の自然な形成はあったが、特に書き言葉、すなわち文章の表記規則の統一は、教科書・新聞・小説などでそれぞれ意図的に試みられ、取捨選択されていくことになる。明治期の言文一致運動は文学においてのみあったわけではないし、まして文学に資するためにあったのでもない。とはいえ文学の、ことに小説の文体が、近代日本語文章表現の実験場となったのは疑いもないことである(スガ秀美『日本近代文学の〈誕生〉』〔1995〕では、そこに潜在する政治性も指摘されている )。
 漢字廃止さえ提案された言文一致運動の具体的試行錯誤は、結局のところ語尾の用法に帰
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