無為自然、苦しみて、苦しむことなく。/生田 稔
受賞してすぐの講演が大隈講堂で催された。「一年前僕はこの会場でヤジルがわにいたのに今日は僕は、ヤジられる場所にいます。」とだけ大江さんは発言してから、ポーット上気してすぐに舞台裏に引っ込んでいった。
開高さんのほうは落ち着き払って話をされたが、何を聞いたのか覚えていない。僕が京都の浄土寺西田町九十一番地の自宅でバートランド・ラッセルの「The conquest of happiness.」やギッシングの「The private papers of Henry Ryecroft.」・田中菊雄先生の「英語広文典」などなどをよみふけっていたころ、二人のうちの大江さんは大学四年生ですでに芥川賞をとって
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