無為自然、苦しみて、苦しむことなく。/生田 稔
 
歴史、哲学、文学、語学、詩と詩論、などなど物理や数学などにも関心をもったこともある。振り返ってみるならば一千冊ぐらいの本を丹念に読んだかもしれない。苦しみにも十分過ぎるほど出会った。お前は楽しんだのだという人もある。俺たちのほうがもっと苦しんだのだとよく言われる。
 今も何故か心なのか心臓なのか良く判らないけれど、グーット苦しみが襲ってくる、しばらくすると、消えることもある。二十二歳で早稲田大学の文学部外国語学科英文専修に合格して、普通より四年も遅れて、さあ勉強だと東京の下宿で生活を始めたのは昭和三十三年の春だった。酒もタバコもやらぬ清い青年であったその頃の私だったが東京の街は勉強には向かない。
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