うなばらをこえて/李恵
ばなければよかった。名前を呼ばなければよかった。
同じ学校に通うとなりに住むドーベルマンのドラフトの飼い主は
ラニーの元に駆け寄ると抱えあげて目を閉じた。
「ラニーはしんだよ。」
言葉がでない。衝撃が強すぎると言葉がでてこない。あ、う、う、なんて伝わらない。
ドラフトの飼い主はラニーを道路の脇に寄せて頭を撫でた。
私は何もできない。ラニーがみえない。みえない。
「ピース。」
え。何いってんの。
「ピース。」
ドラフトの飼い主は私に平和と訴えてる。ラニーが死んで何が平和なの。
「ラニーは空にかえった。ピースだよ。」
ドラ
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