うなばらをこえて/李恵
走るのが速くて黒猫で美しかった。
ラニーは私をよく知っていた。私もラニーをよく知っていた。
ラニーはとなりのドーベルマンのドラフトに喧嘩を売るくらい勝気なのにおませさん。
内気な私はいつもみていた。ラニーをよくみていた。
私は通信制に通ってた。だから月に一回学校に行けばいい。
後はずっと家にいてラニーの帰りを待っていた。
月に一度の登校日。いつものように登校して勉強して。
変わらない毎日を過ごしていたらその日から変えられない日々が始まった。
ラニーは車にひかれて死んだ。
ラニーにはひかれたばかりだと言うのに蛆虫が這っていて原形など留めていなかった。
名前を呼ばな
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