みかん味の金魚/壺内モモ子
 
か」
「そうだよ、わしだっていつもデザートに食べているんだ。わしの好物はこのメロン味の金魚なんだ」

おじいさんは緑色の金魚を今度は素手で捕まえて、アロワナのようにぺろりと食べた。

「そうだ、今日は特別にこの、だいだい色の金魚をサービスしよう。どんな味がするかは大体、想像がつくと思うが、食べてからのお楽しみだよ」
「いえ、けっこうです」
「いいからいいから」
「ほんとうにけっこうですから。困ります」
「そう遠慮するなって」

おじいさんはビニール袋に、だいだい色の金魚を一匹入れて、強引に私に持たせた。

「もしこの金魚が気に入ったら、明日もまたやっているからぜひおいで」
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