みかん味の金魚/壺内モモ子
いた。
80歳くらいのひょろひょろとしたおじいさんがお店をやっていた。
おじいさんの後ろでは猫が4匹、ニャーニャー鳴いていた。
「そこの娘さん、金魚はいかが」
「いいえ、うちには水槽がありませんから」
「これは観賞用の金魚じゃない。食べるための金魚だよ」
「この金魚は味つきなんだ。このピンク色の金魚はイチゴ味、この青い金魚はハッカ味なんだよ」
おじいさんは金魚を網ですくって猫に食べさせた。
猫は、金魚をむしゃむしゃと食べ、嬉しそうにニャーニャー鳴いていた。
「ほら、猫たちも美味しいといっている。ぜひ金魚すくいに挑戦したまえ」
「あのこの金魚、私が食べるんですか」
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