最後にワルツを/蒸発王
楽室で過ごし
故郷に戻った
廃校が決まって
校舎が取り壊されると知った今
もう一度
あのピアノに会いたくて
取り壊しの1日前に
学校に着いた
古い木造の校舎
土と
古くなった木と
日だまりの匂い
音楽室
ピアノは居た
時刻は放課後
黒い塗装の艶が夕日を映して
茜に輝いていた
フタを開けて
鍵盤に指を滑らす
もちろん弾くのはショパン
『別れの曲』
一音一音
あの日々が思い起こされて
変わらずにピアノ鍵盤は軽く
音色は懐かしむように響き
夕日のせいか
ほんのりと暖かくなっ
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