最後にワルツを/蒸発王
 
なったピアノが
少し泣いているように感じた


最期の音色


未練が残るから
この一曲に心を込めて
さよならをした



学校から出る時

  素敵な音色でした
  レコードを聞いてらしたのですか?
と守衛から尋ねられた
  いいえピアノを弾いていたのですよ
と応えると
  それはおかしい


あのピアノは一足先に解体されたのだ という


駆け足で音楽室に戻れば
ついさっきまで居たピアノは
何処にも居なかった


ああ

そうだったのか


“別れの曲”


最後に
もう一度だけ

君とワルツを





さようなら 先生







『最後にワルツを』

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