最後にワルツを/蒸発王
なったピアノが
少し泣いているように感じた
最期の音色
未練が残るから
この一曲に心を込めて
さよならをした
学校から出る時
素敵な音色でした
レコードを聞いてらしたのですか?
と守衛から尋ねられた
いいえピアノを弾いていたのですよ
と応えると
それはおかしい
あのピアノは一足先に解体されたのだ という
駆け足で音楽室に戻れば
ついさっきまで居たピアノは
何処にも居なかった
ああ
そうだったのか
“別れの曲”
最後に
もう一度だけ
君とワルツを
さようなら 先生
『最後にワルツを』
戻る 編 削 Point(12)