■批評祭参加作品■日本の詩における韻律の歴史/岡部淳太郎
 

 大正時代になって登場した萩原朔太郎は、一般に口語自由詩を確立したという評価が与えられているが、第一詩集『月に吠える』を見ると、完全に自由な詩を書いていたわけではなく多少前世代の影をひきずっていたことがわかる。


つみとがのしるし天にあらはれ、
ふりつむ雪のうへにあらはれ、
木木の梢にかがやきいで、
ま冬をこえて光るがに、
おかせる罪のしるしよもに現はれぬ。
みよや眠れる、
くらき土壌にいきものは、
懺悔の家をぞ建てそめし。

(萩原朔太郎「冬」全行)


 こんな詩を見ると、どこが口語自由詩なんだと言いたくなってくる。「現はれぬ」「建てそめし」などいかに
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