■批評祭参加作品■日本の詩における韻律の歴史/岡部淳太郎
 
かにも文語調だし、七五調の残り香が漂っているような感じもする。だが、萩原朔太郎の詩で現在につながるものとして注目すべきなのは、次のような詩だろう。


みつめる土地(つち)の底から、
奇妙きてれつの手がでる、
足がでる、
くびがでしやばる、
諸君、
こいつはいつたい、
なんといふ鵞鳥だい。
みつめる土地(つち)の底から、
馬鹿づらをして、
手がでる、
足がでる、
くびがでしやばる。

(萩原朔太郎「死」全行)


 一読、実に単純な構成の詩であるとわかる。四行目の「くびがでしやばる、」までがAパートであり、つづく三行がBパート。そして最後の五
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