イメージ・ストリーミング/加藤泰清
蟹が見える。蟹は真正面から私を見据えている。なので蟹の甲羅の色がよく見えない。黄ばんでいる、グロテスクな模様の腹ばかりが見えて気持が悪い。蟹のハサミは、外側が標準よりも少し長い。それ以外に変わったところは無い。
蟹が左側に歩き出す。私は地面についた足跡を目で追っている。砂だ。砂が次々とへこんでいる。ここはどうやら砂浜だ。磯の香りがする。突然目の前から波が襲ってくる。私はパッと飛び上がる。白のパーカーには大量の砂がこびりついている。ジーパンにもついている。どうやらパンツの中にも入ったようで、下半身が砂まみれでバサバサとした感触がする。ぱんぱんと砂をはたき落とす。前を窺うと遠く向こうに水平線を見つけ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)