しじまの帰り行く/do_pi_can
家の間に間に沈む,うすら赤い月よ
発酵よ
若きオイディプスのため息よ
残光よ
名残のみとどめる冬の冷気よ
お前の移り香よ
一つの歴史となるか
二つ目の笑い話となるか
悲哀は,ただそれだけで
財布の中の
たった一枚の五円玉に似ている
お前は,それを
何度も,何度も
阪急電車の切符の販売機に通し
受け入れられぬ事に金銭的差別だと悪態をつく
いかにブルジョアジーが多いといえ,
それは,阪神電車でも同じこと
思い込みから出た想いが
どうどうと,めぐりめぐって,
いつしか,時が巡ったことにすら
気がつかない
季節の移り変わる痛みに耐えかねて
橋の上から投げ
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