しじまの帰り行く/do_pi_can
 
投げた物は
焼き栗であったか
檸檬であったか
今となっては,定かでないが
裸のお前を毛布に包み
夜の浜辺で
その実像を解体する
夜光虫の輝きは
お前の愛の証であろうか
犬の溺死体が燻される
その横で
二人は,確かめ合ったはずだ
赤々と立ち消え行く炎に
蛍の青は寂しすぎた

漁師の女将が
手を打ち,踊る

気持ち塩辛くなりたいものよと願った魚醤よ
流転よ
机の上におきっぱなしの腐りかけたバナナよ
抑鬱よ
明日,浴槽に沈められる定めの冬の夏蜜柑よ
若い女の涙よ

早々に立ち去りたしと思えど,
凍てついた足の裏には血も通わぬから
西宮市の粗大ゴミ集積
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