目的地からの今の自分の距離。/腰抜け若鶏
目的地ははるか遠くだった。
直線距離にしておよそ60km。
どれも同じような建物と曲がりくねった道が邪魔をして僕の目にはその目的地が見えない。
僕はそれでも必死でペダルをこいでいた。
この先に確かに目的地があると分かっていたから。
ずっと前にデパートで買ってもらった一万円の自転車。
変速ギアはついていない。
暑い日だった。
僕の体に突き刺さるように降り注ぐ太陽の光。
体温を少しでも冷まそうと体は大量の汗を排出する。
おかげで喉はカラカラ。唇の表面は完全に乾いていた。
筋肉の中で乳酸が作り出されて今の運動にブレーキをかけようとする。
でも、僕には休む事なんかできなかっ
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