去年の春のこと/はな 
 
明け透けな 夜の温度を 手ではかり


*


きょねんのわたしが
さくらのしたでそつぎょうをしているころ
まだはだざむいこうえんのベンチで
あなたは
またはんぶんになってしまったからだで
ゆびさきを缶コーヒーで あたため
ねこのこうびに
はるをかんじていました





「春先」


ぬるい新学期に
とおく
ぼやけたすいへいせんが見える

おはよう

重なる声
とおりすぎるとき
目を合わせずに 
あなたは またわらう


やがてすべてがすなになる予感を
だれもが胸にうかべていて
あたしは
なにひとつ 手にできな
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