去年の春のこと/はな
明け透けな 夜の温度を 手ではかり
*
きょねんのわたしが
さくらのしたでそつぎょうをしているころ
まだはだざむいこうえんのベンチで
あなたは
またはんぶんになってしまったからだで
ゆびさきを缶コーヒーで あたため
ねこのこうびに
はるをかんじていました
「春先」
ぬるい新学期に
とおく
ぼやけたすいへいせんが見える
おはよう
重なる声
とおりすぎるとき
目を合わせずに
あなたは またわらう
やがてすべてがすなになる予感を
だれもが胸にうかべていて
あたしは
なにひとつ 手にできな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)