キミの掌の/AKiHiCo
 
「あげる」 
キミはそう言って僕に両手を差し出した
けれどその掌には何も載っていない
僕はキミの顔と掌に交互に目をやった

「いらないの、」
微笑みながら両手を差し出したまま
キミはその腕を掲げるけれど
何も入っていないのに
僕にどうしろと言うのだろう

ビルディングの屋上
何もない無機質な空間
突風だけが冷たく
柵を握って見下ろした
凍るような痛さが身体中に走る

「勿体ないね」
キミは両手で口許を隠すように笑った
「君ももうすぐこの掌の中身が見えるようになるって」
そこまで言ってキミはくるりと右足を軸に反転した
「そう言ってたよ」

キミはどうやっ
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