四季/渡邉建志
 
 


一月
夢から覚めた
中世の僧たちが
山の僧院から
列をなして
出てくるところだった
杖を突きながら
歩いていた
暗く



葬列
そのものが幽霊のように
凍った池を
あてもなく歩く
沈黙の糸を
引き摺りながら

鐘が鳴る
誰もいない僧院
石の匂い



  
三月
あなたは花のにおいがした
いや、あなたは
あなたのかたちをした花だった
春の風に無数の花弁が揺れて
はしりまわる小さな香りが
あなたの指先からこぼれていた



四月
あなたは雨のにおいがした
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