四季/渡邉建志
 

いや、あなたは
あなたのかたちをした雨だった
三月の花は雨に耐えられず落ちていった
雨のあなたを抱きしめてみても
無数の悲鳴が聞こえるばかりだった



川の源流で
一粒の雫が
生まれでようかどうしようか
悩んでいた
そのまわりでたくさんの仲間が
あふれでていった、
からりとした
空へ



  
ベランダから
踏切を見ていた
雨が降っていた
滲んだ光が流れていた

踏切が鳴った
光が淀んだ
踏切が上がった
光が流れだした
また
踏切が鳴った
光が淀んだ
そこに
あなたの瞳があった
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