ムウンストラック??詩のスケッチブックから/ならぢゅん(矮猫亭)
仕事帰りの電車の中で三角みづ紀の詩を読んでいたら
左側のページの裏から若い女の立ちあがる気配がした
ようやく座れる、その程度のことがまるで恩寵のように感じられた
誰かが石を投げてくるように思えるので
表通りは避けて歩くのです
(「ムウンストラック小詩集」から「序章」全文)
三角みづ紀の詩を抱き寄せ
体を半身に女の立ちあがる空間を作る
すれ違いざま網棚の鞄に右手を伸ばすと
真後ろから年老いた男の疲労が波立ち
目の前にできた女ひとり分の隙間に押し寄せる
呆然と見送る私をうかがうように見上げながら
男はそっと腰を落としてゆく
鬼さんこちら
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