嘴/石川和広
 
笑ってる
イライラしてる
電車にのる
意味なく運命から逃げて京橋を通りすぎ
光が刺して来る
きもちいい
何かが静まり
次の川をわたりながら
女の子の高くいきる声に、おののく
電車の中でなく
人が沢山いなければ
「うちのお母さん、お母さんらしいこと何もせえへん」なんて聞かずに済んだかもしれない
もう大阪に着いたので女の子はいなくなった
一緒に降りたのに離れ離れ
それでいい
久しぶりに実家の方向へ微妙に滑るコンコース大阪駅を歩いて

だ、けども「お母さんらしいこと]なんて一番怖いことだ
愛されないことがあり
愛し合うことでより愛が綻んでいくことがある
水をやり
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