八柱腰折れ屋敷十字舎房/一番絞り
この牢獄(パプノティコン)は、ひじょうにあたまの冴えたクールな狂人が設計したのだ。
天窓からふりそそぐ季節ごとの光の重量、色彩の変容までを数量化し、
そこから落ちてくる微細なホコリの乱反射までを
計算にいれていた...。
余ハ在ル八角形ノ広堂ニ関スル八柱腰折れ屋敷ノ設計ニ当タリ、
コレヲ立体架講(Spasetruss)ト考ヘテ一種ノ計算法ヲ試ミタリ
この一望監視施設は冬になると骨の髄まで冷えた。
レンガ色の空間に閉じこめられた異界の冷気は無慈悲に、容赦なく囚人服を突き抜けて生身に浸透し、Kの口からたえまなく靄のようなガスを吐き出させた。
Kは板の間の独房に一日中、正座さ
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