詩人のティッシュ(満帆さんに韻文レスバージョン)/佐々宝砂
詩人が食卓のナプキンに詩を書き得た時代は過ぎた?
それとも今なおわれわれにそうした牧歌的行動は可能?
私の机の上には音楽と絵画と文学に類似した何かを収めた小さな箱がある、
これはナプキンではない。
鼻水みたいなとろとろの排泄物を私はそこに吐き出す。
これはナプキンではない。
使用済みのティッシュだ。
わずか150倍の倍率で、
ティッシュの上の鼻水は細胞として観察される。
死んだその細胞に細胞核はない。
私が見たいのは細胞核のようにまるいものだ、
まるいものだ、
まるい傷を無数に持つものだ、
私の知らぬ情報をはらみ、
天遠くから落ちてくる微小なものだ、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)