あの頃の/蒼木りん
二十五年ほど前に 迷って手に取った この詩集は
町の 今はもうない本屋の棚の 高い場所にあった
ジュニア文学とかなんとかいう 厚手の本が並んでいて
『ビルマの竪琴』と
どちらにするか悩んだけれど
勉強のわからなかった私でさえも
後ろ髪を引くような言葉が並んでいたから
そこで「さよなら」したくなかった
先ず
詩の
短い文字の列がすきだ
しかし
すべての「詩がすき」ではない
それは
坦々とした生活の中の
しずかに燃える蝋燭の灯りのような詩
織り込められる情景 身を捩るような激しさ 苦脳の故
読み手が 感情の淵に追い詰められてゆく
二十五年後
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