帰し方の甘露(仮題)/やなし
 
 ぎぃころぎぃころ
 ぱたんぱたん
 ぎいぃころぎいこ
 ぱとたたん

ふいの夜風に あらぬ匂い
むせるほどの 肉の香り

 ぎぃころぎいぃころ
 ぱたんぱたん

そこまで来ているのなら
戸を叩いてくれればいいものを

なにをそんなに
おびえているのか

 ぎぃころぎこん
 ぱとたとん

それとも隠しているつもりか
あかくあかく長い舌
やあまったく
いやらしい



 ぎぃ

 ぎぃ
 ぎぃ

踏みしめるごとに耳障りな嬌声
ぬらぬらと光る不具の左足
そのつま先さえ
私の分け前ではないらしい
私はそれを翡翠と聞いた

 ぎぃ
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