降りつのる淫雨のように/hon
その太陽の中で夏があえかに蘇るポストの扉を、十二月がジョルジュ・サンド広場へ殺到する以前に、あたかもクーリングオフで梱包され損なった航空便が、ひとつまたひとつ再検査に引っかかり、検閲され、徴収され、洗面器の平板さに静まり返った日没の東京湾に、極秘裏に横流しされてしまうきっかり三十分前、淳子は走った。ひた走りに走った。発情したブラウスのカラーが背景の組み合せに溶暗してしまうほど、野卑で軽薄な笑い声をひっきりなしにあげている食堂の向かいでは、ときおりブルジョア階級層全体の先の尖った観葉植物が、白い蒸気を大っぴらに吐き散らしつつ爆笑また爆笑を誘っていたが、何度もめまぐるしく右から左から押し寄せる、水死体
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