花/若原光彦
世界の片隅に咲く花を
うつくしいと言うことはできない
ぼくはその花を
見たことがないのだから
その花自身は
なにも語らないのだから
あなたが
浮かんでいる雲を見て
自分にも翼がほしいと思うのはいい
それを話すのもいい
なにかに書いてもいい
絵にしてもいい
それのどこが悪いのか
あなたはまだ知らないのだから
世界中のうつくしいものを一箇所に集めたら
そこが世界で一番
うつくしくない場所になる
ねえぼくは
必死でそこへいこうとしてる
誕生日おめでとう
でもあなた
家に帰るべきじゃないかな
あなたが
子供のころを思って
遠くまできてしまった気が
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