花/若原光彦
気がする
と思うのはいい
それに気づくのはいい
考えてみるのもいい
すぐに忘れてもいいし
ずっと忘れないでおこうと決めてもいい
それのどこが恥ずかしいのか
あなたが知らないでいてくれるなら
ぼくは
あなたに
世界の片隅に咲く花を贈る
あなたのために
咲いていました
ぼくにはそう見えました
名前をつけて下さい
花を拉致した
ぼくのかわりに
あなたが
その花を見たいと思うのはいい
花の香りを想像するのもいい
花瓶を探しておくのもいい
でもあなたが
自分もいきたいと言ったら
ぼくは止めるよ
そんな花はないんだって言う
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