若き詩人の手/yo-yo
 
室生犀星の『我が愛する詩人の伝記』を読む。
その中で、立原道造のことを次のように書いている。
「彼は頬をなでる夏のそよかぜを、或る時にはハナビラのやうに撫でるそれを、睡りながら頬のうへに捉へて、その一すぢづつの区別を見きはめることを怠らなかった」。

   ……
   そして 高まって むせび泣く
   絃のやうに おまへ 優しい歌よ
   私のうちの どこに 住む?

             (立原道造『優しき歌』より)


建築士でもあった道造は、色鉛筆をさまざまに使い分けて葉書を書いたらしい。ドイツ製の色鉛筆の蒐集は、道造のもうひとつの手が愛したものだった。
「此
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