カフェにて/渡邉建志
 
思い立って十一時半に神楽坂につくと、さなえさんが表に出ていた。自転車をおりて、お久しぶりです、と挨拶すると、お茶?まんぢう?まんぢうはまだだよ、とさなえさんが言った。十二時開店らしい。中で待つ。忙しく働いているお兄さん(いつも名前を忘れてしまう)に挨拶すると、まんぢうの蒸気の向こうでお兄さんは驚いた表情であって、どうしてそんなに驚くんですか、と言ったら、いきなりだし、シャツが派手ですねと言われた。たしかに白地に色とりどりのモザイクのでかすぎるシャツを着ていた。

おにいさんがまんぢうのたくさんはいった木の箱を持ち上げて、蒸し器の上に載せる、蒸気がもわっと上がる、その、彼の木の箱を持ち上げて蒸気
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