幻想と真理の彼岸で/板谷みきょう
1993年6月のある日、僕の中で鳴りを潜めていたアッケラ感が動き始めた。
僕はその頃、愛と喜びの実践に満ちた『教祖』となりつつあった。僕の内の忌まわしきアッケラ感からの誘惑だ。それは、若き哲学者の太刀郎が、
「僕らの話してる事って、内容はともかく歴史的な流れでいうと、ここ、ここ。『ポスト構造主義の挑戦』、この辺にそっくり。読んでみてヨ。」
太刀郎は別冊宝島44『現代思想・入門』を持っていた。
次の日、僕は
「スゴイ。正に僕達は若き哲学者だったんだねェ。しばらくこの本、貸してくれる?」
始まりはそこにあった。
僕の心の奥深く、檻の中に閉じこめていたはずのアッケラ感は、長い年月の間に
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