各々の春/瑠音
 


春の日 降られたし



パステルカラーの洋服が目立つようになった最近
冬のうちから季節を無視していたあたしは
回りに溶けてしまいそになるのが怖くて
茶色と黒の服を買い込んだ


命を欠いた人形を抱いた少年少女の群れに出会ったとき
結果的に必要なものはもっとシンプルなものなのだと気が付く
自分と彼らの間に線をひいて満足か
それとももともとあった線を踏みにじって満足か


去った誰かを嘆き出会うべき誰かを嘆く
心配性な友人は毎日私の部屋のドアを叩いては
誰もいなくなればいいと言うものだから
ある日目を見て言葉を吐いた
それなら私が 一番にいなくなろうか
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