ネガティブ・ケイパビリティについて/由比良 倖
先日、谷川俊太郎のインタビュー集を読んでいて、一番興味深かったのが、詩人の一番の特質として「ネガティブ・ケイパビリティ」という能力が何よりも大切だ、と書かれていたことだ。長く引用するのは気が引けるので、僕なりに解釈すると、「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、個人として積極的に何かを感じる能力とは真逆で、むしろ自分を無にして、何かを完全に受動的に感じられる能力、感じる対象に自分を同化してしまえる能力のことなのだと思う。ここでは詩人として、自我を全然持たない特質のこと。自分が無い。だから何にでもなれる。「詩人はカメレオンだ」ということを詩人のジョン・キーツが手紙で書いていて、その文脈でこの「ネガティ
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