それは雨の。/永乃ゆち
 

それは冬のひどく雨の降る日の夕方




雲に隠されて夕日なんて見えなかった



私は独り車内に残されて



しわくちゃの一万円札を持たされていた



夜になると雨は一層ひどくなって



私は自分の置かれた立場を理解した




母は私を置き去りにして行ったのだ



店の明かりも消え照明も落とされた頃



私は寒さに震えていたが不思議と寂しさは感じなかった




ことあるごとに私に暴力を振るった母親から




逃げ出せたと思った




その安堵感と自由になれた嬉しさに




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