出雲より 雲出づ/るるりら
 

ふっくらと 光線を 中に吸い取りながら
梅が ごつごつとした 枝先に 咲いた
厳しく けなげな そのさまに なぜか
ある夏に訪れた 遠い島のことを思った 

出雲の孤島の海岸には無数に瑪瑙の石がころがっている
ひかりが うまれる この季節に
あの島のあたりで 雲が出ずるのが解る気がして
あの島に問いたくなる

箪笥の奥から
遠い日 出雲の孤島で持ち帰った 石を
とりだして 日に透かしてみる

透明だ
けれど透明だと 言い切ってしまったら それは嘘で
海辺の瑪瑙は 透明の中にも その奥に不透明の翳りのある石
けれど 海の いとなみをその身
[次のページ]
戻る   Point(9)