/紀茉莉
 

そこには
みんなのようにはなせないわたしの言葉があって
けれど
それは化石になっていてもう、いまは、ただの塊

根源的に
生命を疑うものに用意されていた、いつの日かの理由をさけぶ時はとうの昔に過ぎ、たどり着いては、幼き図画の前でたたずむ(わたしは、それから、もう、何十年、いくつかの使い分けるわたしをもって、目をさますことのない扉をきりはなし流し去ったまま年をかぞえて)

3才までの記憶が思い出されることはない、なんていう、当時の認識に朱の色をさした
はじまりの雨の日と
おなじ色をした幾重もの塔と幾重もの和装
偶然、知ることになった、彼女の名は千姫、おもわれたひとの手によって、
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