戻す理由/後期
朝、主人は何も言いませんでした。
何も言わない、ということ自体が、すでに何かを言い切っているような沈黙でした。
起きてくると、主人は卓に座り、腹のあたりに手を置きました。押しもせず、確かめもせず、ただそこに在るという事実を、否定も肯定もしない触れ方です。私は、その手つきで分かりました。――今日は、内側が外を向いている。
「変わった?」と私は聞きました。
主人は首を横に振りました。
「変わってはいない。ただ、はっきりしただけだ」
それ以上の説明はありません。
説明がないのは、分かっているからではなく、説明する必要がないからです。
茶を出すと、主人は黙って飲みました。
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