曇天の重量/山人
 
曇天の上側には太陽があることなんて信じられない。私は朝五時から午後一時までの勤務を終え、こうしてぼんやりと外の曇天を眺めている。曇天には重量があると思っていて、このやるせなさと、なんとはなしの失意感はどこかで誰かによって製造されたものではあるまいかと思ってしまう。

独白すると、昨日、私は山に行っていた。『「そこに山があるから」というセリフがあったから行ったのです』、という事は正しくもある。思えば昨日も曇天ではあったが、少しだけ明るい色合いではあった。失意の中にほんのわずかな朱色の輝きのようなイメージ。そのわずかな期待みたいなものを眉間に押し込んで歩き出したのだ。

「ひたひたひたと足を進
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