曇天の重量/山人
 
を進める教」があるならば、その信者でもあったわけだが、誰も居ない山岳の雪山に身を置くことが一種の義務であるように、私はそこに居たのだ。目指すは頂きでなくても良かったし、何も目指さなくても良かった。ただ私は一つの、一個の、「ひたひたと足を進める教」の信者なのです、と言いたかった。

ときおり私は何かについて独り言などを言っていたと思う。そしてその独り言を雪達は黙って聞き耳を立てていたし、そこにある種の親睦が生まれていたのである。

此処に居るのは去年のままの大木たち。そこに鮮烈な色合い(ヤドリギの黄色い実と橙色の実)が私の眼前に有ったことが酷く切ないくらいうれしかった。
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