恋文のやうに/積 緋露雪00
何故にそれに惹かれてしまったのか
判然としないまま、
日を追ふごとに益益惹かれるそれは、
一般に自分自身と呼ばれてゐるが、
吾にはそれは異形のものとしか思へず
それでも惹かれるのは
己の眷属故だらうか。
それに対して何よりも先立つのは
恐怖なのだが、
雨に濡れてぶるぶる震へる仔犬のやうに
頼りになるのは仔犬を見つけたものであるのと同じく
吾は吾を頼りにしてゐて、
異形のそれもまた、
ぶるぶる震へる仔犬のやうに
吾に擦り寄ってくるから尚更いけない。
人知れず吾は不知不識のうちに
その異形のものが可愛らしく、
恋心を抱くやうになったのだ。
これが尚更いけないのは相思
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