恋文のやうに/積 緋露雪00
相思相愛といふことなのだが、
照れ隠しもあって、
吾はそれに対して突っ慳貪な態度を今も尚とってゐる。
それは餓鬼の頃の好きな女子に対する態度にも似て、
意地悪をして気を引かうと精一杯の愛情表現なのだが、
意地悪をされる女子は堪ったものではない。
だからその異形のものは愛してゐるにもかかはらず
いつしか吾に対して牙を?くやうになり、
隙あらば首の急所を噛み切る殺気を放つやうになった。
一度吾は夢でそのものに唇を噛み切られ、
一週間ほど吾は唇を青黒に腫らせては
傷の癒えるのを待つ己を鏡の向かうに見出してゐた。
だが、吾のそれに対する愛情は冷めるどころか、
益益昂進し、
気が付けば吾は其奴に惑溺してゐたのだ。
――嗚呼、愛しきそれよ、吾、偏にお前を愛する。
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